[英語版: ORCID members in Japan seeking more concerted efforts]
日本ではすでにORCIDメンバーとなっている機関が中心となって、来年4月を目処に学術機関によるコンソーシアム設立を検討しています。東京工業大学でORCID実装にあたっている 森雅生教授 に現在の検討状況についてお話をうかがいました。
ORCIDコンソーシアムを検討しているのはどの機関ですか?
すでにORCID機関会員である5機関を中心に、日本の学術機関によるORCIDコンソーシアムが検討されています。3つの大学(慶應義塾大学,東京工業大学,筑波大学)と、2つの国立研究機関(物質・材料研究機構, 国立情報学研究所)です。
2017年9月に,これらの機関の実務担当者や,他の研究大学の最もORCIDに近い実務者を対象として、コンソーシアム設立可能性を探るためのオンラインミーティングが行われました。
どんなことが話し合われましたか?
機関参加による直接的なメリットはAPIの優先的利用権ですが、そうした技術的な議論だけでなく、コンソーシアム化することによって日本国内の研究者情報の統合や、科学技術政策へのORCIDの具体的な活用方法についても議論されました。
その後どのような進展がありましたか?
現在は,2018年4月のコンソーシアム設立に向けて,上記有志による設立趣意書の作成や,各種事務手続きの方法など,具体的な議論と作業が続けられています。12月26日にはNIIを会場として、より多くの機関を招いて検討会が開催される予定です。また、2018年1月に予定されているリスボンでのコンソーシアムワークショップにも関係者が参加する予定です。
関係者内ではどのようにコミュニケーションをとっていますか?
コンソーシアムの設立のための情報共有のツールとしてウェブサイトを立ち上げました。また,機関会員および機関参加を検討している機関の担当者のためのメーリングリストも運営しています。
東京工業大学は2016年9月からORCIDメンバーとなっています。ORCIDをどのように活用されていますか?
現在,Tokyo Tech Research RepositoryにORCID APIを実装し、研究活動のエビデンスとしてORCIDからデータをダウンロードしています。組織及び個人の評価システム(制度)を確立するにあたっては、まず研究者の活動状況について効率的なデータ収集が必要です。このため、ORCIDから研究業績データが自動的に提供されることは有益です。 本学では、海外からの研究者のリクルートや、本学を修了したポスドクの海外派遣の際に、ORCIDが役に立つことが知られつつあります.研究者情報の円滑な移行やプロモーションへの活用の観点で,ORCIDの需要は高まると考えます。
日本の研究機関がORCIDを導入するにあたり、どのような困難を克服する必要があるでしょうか?
個別の研究機関が十分なリソースを持っているわけでないので,ORCID機関会員専用の特典を十分に活用できるとは限りません。この事実は、大学や研究機関がORCID会員となるインセンティブを縮退させていると思われます。個人的な見解ですが、日本では、コンソーシアムが協力して特典機能を利用したサービスを企画し、機関会員増加を進めるべきだと思います。