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メンバー(機関会員)は、ORCIDの礎です。グローバルなレジストリを維持するだけでなく、コミュニティ全体の成長を促進するために極めて重要な洞察を提供してくれます 。
この記事では、ORCID日本コンソーシアムのメンバーを対象に実施されたアンケート調査から得られた、現場の経験と価値のストーリーを紹介します 。早くからORCIDが導入された日本では、堅実な全国規模のコンソーシアムが大学ICT推進協議会(AXIES)の主導により設立されました 。
コンソーシアムの設立から6年余りが経過した今、日本におけるORCIDの導入状況を振り返るのに相応しい節目を迎えました 。現在のメンバーシップのメリットや直面している課題、そして今後の展望を探るため、2026年2月から3月にかけて包括的な調査を実施しました 。コンソーシアムに参加する23メンバーのうち18機関から回答が寄せられ、ORCID導入の「なぜ(Why)」、「何を(What)」、そして「どのように(How)」について、それぞれがたどった道のりが語られました 。
ORCIDメンバーシップの価値:信頼、可視性、そして自動化
日本コンソーシアムのメンバーがORCIDへの加入を決めた背景には、国際的な可視性の向上、オープンサイエンス政策への対応、そして事務負担の軽減に対して共に取り組む姿勢がありました 。メンバーシップの価値を最大限に引き出してこれらの目標を達成するためには、機関システムとの連携が極めて重要であることがアンケート調査から明らかになりました 。
ORCIDの導入について具体的にどのようなサービスと連携しているかを尋ねたところ、回答者からは多様な事例が寄せられました。
- 横浜国立大学は、教育研究活動データベースとORCIDを連携させ、機関が保証する所属情報を研究者のORCIDプロフィールに登録するとともに、研究業績をデータベースに取り込んでいます。
- 自然科学研究機構は、共同利用・共同研究管理システムNOUSにORCIDを実装して、ORCID上の業績情報を申請書に取り込めるようにするとともに、採択情報を自動的に研究者のORCIDプロフィールに登録しています。
- 京都大学は、教育研究活動データベースとORCIDを双方向に連携させるRIS-ORCID(ORCIDプロフィール連携システム)を運用しています。
- 奈良先端科学技術大学院大学 (NAIST)および沖縄科学技術大学院大学 (OIST)は、機関が保証する所属情報を研究者のORCIDレコードに登録しています。NAISTはアトラス社のSociety to ORCIDを、OISTはAffiliation Managerを利用しています。
ORCIDと内部システムの連携後、各機関はワークフローの効率化、特にデータの自動連携や異なるサービス間のシームレスな相互運用において著しい改善を実感しています 。特に重要なのは、システム連携によって組織レベルの信頼性が強化され、検証済みの所属情報を研究者のORCIDレコードに機関が直接書き込めるようになるという点です 。
あるメンバーは、これについて次のように述べています。
「ORCIDの活用によって学術情報の正確性や信頼性に研究機関が自らコミットできる。」
また、別のメンバーは世界規模での実務的な利点を強調しています。
「リポジトリの登録成果を海外のデータベースに、ORCID込みで収録できることの利点は大きい。」
システム連携済みのメンバーにメンバーシップの本質的な価値を尋ねたところ、以下の3点が共通して挙げられましたました 。
1. 国際的な可視性の向上
ORCIDは、ローカルな研究情報と世界的なディスカバリーをつなぐ強力な架け橋です。ある回答者は、ORCIDは「所属研究者の国際的な認知度を高めていく有力なツールの一つ」であると述べ、また別の回答者は「ローカルの事務作業が効率的に行えるようになり、さらにその結果をグローバルに反映させることができる」としています 。システム連携によってリポジトリのワークフローをいかに自動化できたかを共有するメンバーもいました 。
「CrossrefやDataCite, Web of ScienceやScopusなどの多くのデータベースにおいて、機構の研究成果の把握が容易になった。また、それらのデータベースのAPIを用いることで、研究者への論文や研究データのリポジトリの登録依頼を自動的に行えるようになった。」
2. 研究者の同定作業の効率化
名前の曖昧さは、依然としてグローバルな研究における大きな障害であり、ORCIDはその解決を目指しています 。メンバーはORCIDが「著者同定の正確性の向上につながる」点を高く評価しており、ある回答者はこのメリットについて「PID(永続的識別子)が一意に決まるのが魅力」だと端的に述べています。
3. 情報の質の向上
高品質なメタデータの作成には、協力体制が必要です 。「出版社のみならず機関も積極的にORCIDを活用し、またそれ以外の機関がもつ情報も追加されることで、ORCIDプロフィルの質が高まり、ORCIDの普及とさらなる活用が期待される」とあるメンバーは説明しています 。また別のメンバーも、ORCIDに反映される業績情報をローカルシステムに同期でき、情報の質が担保できることを高く評価しています。
このようなORCID日本コンソーシアムによる進捗は、高品質なメタデータを示唆するTrust MarkerをORCIDレジストリにさらに蓄積するという大きな可能性を秘めています。[ORCID Trust Markersについて詳しくはこちらをご覧ください]
コミュニティの協働による障壁の克服
ORCIDと機関ワークフローの連携が大きな価値をもたらす一方、その実現には障壁もありました 。日本コンソーシアムのメンバーは主な課題として、ORCIDの導入と維持に必要な人材と財源の確保を挙げています 。
この課題の根底にあるのは、根本的ですが時に見過ごされがちな概念です 。それは、研究者や支援者、そして大学の意思決定者がORCID導入を本気で優先しアクションを起こせるよう、PIDの価値とメリットを明確に伝える必要がある、ということです 。
これこそが、コンソーシアムの真価が発揮される場面です 。日本コンソーシアムによって形成された実践コミュニティは、こうした障壁を乗り越える有効な手段となります 。今回の調査結果は、ORCIDとの継続的な連携と相まって、コミュニティが取り組む真のデジタルトランスフォーメーションの具体的な証左であると言えます 。
さらにメンバーからは、API実装に関する技術的な課題も挙げられており、その多くはベンダー依存や組織内のIT専門人材の不足に起因しています 。開発者リソースを必要とせずに所属情報の登録ができるという点で、コンソーシアムメンバーのために用意されたAffiliation Managerツールが、日本のメンバー機関では特に有効だと報告されています。加えて、国内のベンダー数社が現在ORCID認定サービスプロバイダー(CSP)に申請中で、直近では、SRA東北が提供するDB-Spiralが認定を受けています。
次なる展望:日本の研究エコシステム全体への展開
ORCID日本コンソーシアムのメンバーは今回の調査の中で、ドキュメンテーションの整備と日本の実情に即したケーススタディの開発が、より広いコミュニティの発展に向けた重要な優先事項であるとしています。
今回のアンケート調査から得られた率直なフィードバックは、機関会員であることの具体的な価値と、私たちが共に解決していかなければならない共通の課題の両方を浮き彫りにしました。今後の目標は、リード機関(AXIES)とコンソーシアムメンバーが、各機関でのORCID導入をさらに進めるだけでなく、成功事例を日本の研究エコシステム全体へ効果的に発信する未来を築くことです。
日本コンソーシアムの最初の6年間は素晴らしいスタートとなりました。今後、さらなる進展と連帯、そして透明性が推進されることを楽しみにしています。
日本コンソーシアムのような地域ネットワークへの参加や設立にご興味のある方は、ORCIDコンソーシアムプログラムをご覧ください。また、意思決定者にPIDの価値を明確に伝えるためのアウトリーチリソースもぜひご活用ください。
実践コミュニティとしてのORCIDについては、以下の記事もご参照ください。
宮入 暢子, 森 雅生. ORCID:実践コミュニティが支える研究者情報基盤. 情報の科学と技術. 2021, vol. 71, no. 5, p. 206–213. https://doi.org/10.18919/jkg.71.5_206
研究セキュリティ/研究インテグリティにおけるORCIDやPIDについて、6月25日(水)14時より開催されるジャパン・オープンサイエンス・サミットのセッションにご参加ください(無料・要登録)。
アジアにおけるORCIDの取り組みについてご関心のある方は、6月30日に開催予定のORCID in Action: Connecting Asian Researchにご参加ください。